164.「手放す」とは、抵抗をやめること

365days

「手放しなさい」。この言葉は、ヨガや瞑想、あるいは自己を探求する道のりで、誰もが一度は耳にするアドバイスでしょう。しかし、その言葉の響きとは裏腹に、多くの人々が「手放す」という行為そのものに途方に暮れています。「何を?」「どうやって?」と。それは、「手放す」ことを、何かを積極的に「捨てる」とか「投げ出す」という、力強いアクションだと誤解しているからかもしれません。

しかし、ヨガ哲学の叡智に触れると、「手放す」ことの本質は、まったく逆のベクトルを向いていることに気づかされます。それは、何かを「する」ことではなく、むしろ、何かを「やめる」ことなのです。何を、やめるのか。それは、「抵抗」です。

人生は、滔々と流れる大河のようなものです。私たちはその流れの中で、ある時は穏やかな水面に浮かび、ある時は激しい急流に揉まれます。この流れの中で、私たちが苦しみを感じるのは、流れそのものが原因なのではなく、流れに逆らって泳ごうとしたり、特定の場所に留まろうと必死で岸辺の草にしがみついたりする、その「抵抗」が原因なのです。「手放す」とは、その必死に握りしめている拳を開き、流れに逆らうのをやめ、川の流れそのものに身を委ねること。それは、諦めや敗北ではなく、流れの力を信頼し、それと一体になるという、極めて賢明でしなやかな選択です。

この思想は、ヨーガ・スートラにおける「イーシュワラ・プラニダーナ(Īśvara-praṇidhāna)」、すなわち「自在神への献身・委ね」という教えに深く根ざしています。ここでの「神」とは、人格的な神を指す場合もありますが、より普遍的には、宇宙の法則や生命の流れといった、人智を超えた大いなる存在と解釈できます。自分の小さなエゴの力で人生をコントロールしようとするのをやめ、より大きな知性や流れに結果を委ねる。これが「手放す」ことの核心です。

また、この考え方は、東洋の古い叡智である老荘思想の「無為自然」にも通じます。最高のあり方とは、何かを意図的に為そうとする「有為」の状態ではなく、宇宙の自然な流れ(道-TAO-)に沿って、為すべきことが自ずと為されていく「無為」の状態である、と老子は説きました。抵抗をやめることで、私たちは無力になるのではありません。むしろ、宇宙全体の巨大なエネルギーを、自らの追い風として使えるようになるのです。

では、この「抵抗をやめる」という稽古を、日常でどう実践すればよいのでしょうか。最も身近で強力なツールが、あなたの「呼吸」です。息を吸う時、私たちは生命のエネルギー(プラーナ)を受け取ります。そして、息を吐く時。この「吐く」という行為こそが、手放しの最高の練習台です。吐く息と共に、身体の緊張、心のこだわり、コントロールできない未来への不安、過去への後悔を、すべて宇宙の広大な空間にそっと還していく。そうイメージしながら、長く、深く、息を吐ききってみてください。拳を固く握りしめたままでは、深く息を吐くことはできません。息を吐ききるためには、身体の力を抜かざるを得ないのです。

アーサナの練習もまた、手放しのための優れた実験室です。例えば、前屈のポーズで、あと少しで床に手が届きそうな時、私たちは力づくで身体を押し込もうとします。しかし、そうすればするほど、筋肉は抵抗し、身体は硬直します。そこで、一度その「もっと!」という欲を手放し、吐く息と共に、ただ身体の重みに任せてみる。すると不思議なことに、力が抜けた瞬間に、身体はすっと深く沈んでいくのです。

「手放す」とは、あなたが大切にしている何かを失うことではありません。それは、あなたが「失うかもしれない」という恐怖そのものを手放すことです。あなたが「こうでなければならない」という執着を手放すことです。抵抗に費やしていた膨大なエネルギーを解放し、今この瞬間を味わい、本当に大切なことに集中するための、力強く、そして穏やかな革命なのです。それは「諦める」のではなく、物事のありのままの姿を「明らめる(明らかに見る)」という、智慧の眼を開く行為に他なりません。



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Kiyoshiクレイジーヨギー
*EngawaYoga主宰* 2012年にヨガに出会い、そしてヨガを教え始める。 瞑想は20歳の頃に波動の法則の影響を受け瞑想を継続している。 東洋思想、瞑想、科学などカオスの種を撒きながらEngawaYogaを運営し、ENQAN(ヨガ)、JIQAN(内観)、瞑想指導にあたっている。SIQANという日本一簡単な緩める瞑想も考案。2020年に雑誌PENに紹介される。 「集合的無意識の大掃除」を主眼に調和した未来へ活動中。