37.ラーガ(愛着) – 喜びを握りしめず、流れさせる

365days

人生には、心を躍らせるような喜びの瞬間があります。恋に落ちた時の高揚感、目標を達成した時の達成感、美しい夕焼けに心を奪われる静かな感動。こうした快い経験(スカ)を、私たちは誰もが求め、大切にしたいと願います。しかし、この自然な感情が一線を越え、苦しみの原因へと変質する時があります。その変質の触媒となるのが、五つのクレーシャ(煩悩)の三番目、「ラーガ(Rāga)」です。

ラーガは一般に「愛着」や「執着」と訳されます。それは、一度味わった快い経験や、快楽をもたらしてくれた対象(人、物、状況)に対して、「また経験したい」「失いたくない」「永遠にこのままであってほしい」と強く渇望し、しがみつく心の働きです。ラーガの根底には、快い経験が「楽しみ」であるというアヴィディヤー(無明)の誤解があります。そして、「この快楽を享受している『私』」というアスミター(我執)が、その執着をさらに強固なものにします。

ラーガの働きは、私たちの生活の隅々にまで及んでいます。

・過去の栄光を何度も思い出し、その心地よさに浸り続ける。

・特定のパートナーや友人なしでは生きていけないと感じ、相手を束縛しようとする。

・手に入れたブランド品や社会的地位を失うことを極度に恐れる。

・「あの時のあの幸福感」を再現しようと、同じ行動を繰り返す。

一見すると、これらは人間としてごく自然な感情のように思えるかもしれません。しかし、ヨガの賢者たちは、ラーガの内包する危険性を見抜いていました。なぜなら、ラーガは必ず、その双子であるドヴェーシャ(嫌悪)を伴うからです。愛着する対象を失うことへの恐怖、それを脅かす存在への怒りや嫉妬。そして、栄光が過去のものとなった現実への失望。喜びを握りしめようとすればするほど、指の隙間からこぼれ落ちていく砂のように、苦しみは増大していくのです。

東洋の思想には「諸行無常」という、この世界の根本原理を示す言葉があります。すべてのものは絶えず変化し、同じ状態に留まることはない。この宇宙の大きな流れ、真理に逆らって、特定の快い状態を「固定」しようとすること。それがラーガの本質的な過ちです。それは、川の流れの中に杭を打ち、水をせき止めようとするような、無益で苦しい試みです。

このラーガの視点は、「引き寄せの法則」を実践する私たちに、極めて重要な教訓を与えてくれます。多くの人が「引き寄せたい」と願うのは、まさにこのラーガが対象とする「快い経験」です。豊かさ、素晴らしいパートナー、成功、健康。これらを求めること自体は、決して悪いことではありません。問題は、その求め方が「欠乏感」と「執着」に根ざしているかどうかです。

「これがないと私は幸せになれない」という強い渇望は、ラーガそのものです。そのエネルギーの根底には、「今はそれがない」という欠乏の周波数があります。宇宙は、私たちの言葉や思考よりも、この根底にあるエネルギーの周波数(在り方)に共鳴します。つまり、欠乏感から何かを強く求めれば求めるほど、私たちは「欠乏している状態」をさらに引き寄せてしまう、という皮肉なパラドックスに陥るのです。トランサーフィン理論で言うところの「過剰ポテンシャル」を発生させ、望む現実からかえって遠ざかってしまうのです。

では、どうすればラーガの罠から逃れ、真に望む現実を創造できるのでしょうか。その答えは、「握りしめる」のではなく「流れさせる」という意識の転換にあります。

ヨガのカルマ・ヨガ(行為のヨガ)の教えは、このための素晴らしい指針となります。カルマ・ヨガとは、「行為の結果への執着を手放し、行為そのものに専心すること」です。目標(快い結果)を設定し、それに向かって為すべきことを丁寧に行う。しかし、その結果がどうなるかについては、大いなる流れ(宇宙や神)に完全に委ねる。これが、ラーガを伴わない創造的な生き方です。

これを引き寄せに応用するならば、まず、自分の望む状態を明確に意図(サンカルパ)します。そして、それが既に叶ったかのような喜びや感謝の感情を、今この瞬間に感じてみます。これは、未来の快楽を渇望するラーガとは全く異なります。これは、「今、ここ」で満たされた状態を自ら創り出す、意識的な実践です。

そして、その意図を宇宙に放ったら、あとは「忘れる」くらいの軽やかさで、日々の生活に戻ります。インスピレーションに従って行動はしますが、「いつ叶うのか」「どうやって実現するのか」といった結果への執着は手放します。まるで、川に紙の船を浮かべ、あとは流れがどこへ運んでくれるかを楽しみに見守る子供のように。

喜びや幸福を感じる瞬間が訪れたら、それを全身全霊で味わいます。しかし、その瞬間にしがみつこうとはしません。美しい蝶が指先に止まった時のように。その美しさを愛で、感謝し、そして、それが飛び立っていく時には、笑顔で見送るのです。なぜなら、私たちは知っているからです。流れを信頼し、両手を開いていれば、また別の美しい蝶が、あるいは思いがけない素晴らしい贈り物が、必ず運ばれてくることを。

ラーガは、喜びを博物館のガラスケースに閉じ込めて、永遠に所有しようとする心の働きです。しかし、本当の喜びは、生きた蝶のように、自由に飛び回ることでその輝きを放ちます。喜びを握りしめるのではなく、喜びの流れそのものになること。その時、あなたの人生は、努力や執着から解放された、軽やかで豊かなダンスへと変わっていくでしょう。



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Kiyoshiクレイジーヨギー
*EngawaYoga主宰* 2012年にヨガに出会い、そしてヨガを教え始める。 瞑想は20歳の頃に波動の法則の影響を受け瞑想を継続している。 東洋思想、瞑想、科学などカオスの種を撒きながらEngawaYogaを運営し、ENQAN(ヨガ)、JIQAN(内観)、瞑想指導にあたっている。SIQANという日本一簡単な緩める瞑想も考案。2020年に雑誌PENに紹介される。 「集合的無意識の大掃除」を主眼に調和した未来へ活動中。