【思考の整理】「過去思考」と「未来思考」の正体とは?ヨガ哲学が教える、不安と後悔から抜け出し「今」を生きる技術

自己啓発

ヨガを推奨しております。
それは、ヨガが体を柔らかくする体操ではなく、暴走する「思考」を調教し、人生の操縦桿を自分の手に取り戻すための実践哲学だからです。

私たちは普段、無意識のうちに絶え間なく何かを考えています。
朝起きてから夜眠るまで、あるいは夢の中でさえ、頭の中のお喋り(マインドトーク)は止まることがありません。
しかし、その思考の内容をよく観察してみると、実はたった「2つの方向」にしか向かっていないことに気づくはずです。

それが、「過去思考」と「未来思考」です。

逆に言えば、私たちはほとんどの時間を、この2つのどちらかに費やし、最も肝心な「現在(今)」を留守にしています。
今日は、私たちのエネルギーを浪費させるこの2つの思考の罠と、ヨガが提示する本来の在り方についてお話ししていきたいと思います。

 

思考という名のタイムマシン

まず、前提として理解していただきたいのは、「思考は常に、今ここにはないものを対象にしている」ということです。
「今、目の前にあるお茶の熱さ」を感じているとき、そこに思考は介入しません。ただ「熱い」という感覚(体験)があるだけです。
しかし、「このお茶は昨日飲んだものより渋いな(過去)」や、「これを飲んだらカフェインで眠れなくなるかな(未来)」と考え始めた瞬間、私たちは「今」という現実から離脱します。

私たちのマインド(心)は、性能の悪いタイムマシーンのようなものです。
勝手に過去へ飛び、勝手に未来へ飛び、決して「現在」に留まろうとしません。
ヨガの根本経典『ヨガ・スートラ』では、ヨガの定義を「ヨーガス・チッタ・ヴリッティ・ニローダハ(ヨガとは、心の作用を死滅させることである)」と説いています。
この「心の作用」の正体こそが、過去と未来を行ったり来たりする、落ち着きのない思考の反復運動なのです。

 

過去思考:終わった映画の再上映

「過去思考」とは、記憶の再生です。
「あの時、ああ言えばよかった」という後悔。
「昔はよかった」という懐古。
「あの人に傷つけられた」という恨みやトラウマ。

これらはすべて、すでに消滅した過去の出来事です。
物理的にはもうどこにも存在しません。存在するのは、あなたの脳内の神経回路の中だけです。
しかし、私たちはこの「終わった映画」を、脳内のスクリーンで何度も何度も再上映してしまいます。
そして、その度に新鮮な怒りや悲しみを感じ、体にストレスホルモンを分泌させます。

現代社会の問題点:デジタル・アーカイブの呪い
現代社会は、この過去思考を強化する仕組みに満ちています。
SNSの過去の投稿、スマホの写真フォルダ、消えないデジタルの足跡。
これらは私たちを常に過去へと引き戻します。
「あの頃の自分は輝いていたのに」という比較や、「黒歴史」への自己嫌悪。
過去のデータがクラウド上に永遠に残ることで、私たちは「忘れる」という自然な治癒能力を阻害されているのかもしれません。

ヨガ的処方箋:エゴの物語を手放す
過去思考に囚われているとき、強化されているのは「エゴ(自我)」の物語です。
「私は被害者だ」「私は苦労人だ」というストーリーを維持するために、過去の記憶が必要なのです。
しかし、ヨガは言います。「あなたはあなたの記憶ではない」と。
過去のフィルムをハサミで切るように、意識的に再生をストップさせること。
「それはもう終わったことだ」と、ただ事実として認め、感情的なエネルギーを注ぐのをやめること。
過去は、今のあなたを定義するものではありません。

 

未来思考:まだ来ぬお化け屋敷

一方、「未来思考」とは、予測とシミュレーションです。
「失敗したらどうしよう」という不安。
「老後の資金は足りるだろうか」という心配。
「明日のプレゼン、うまくいくかな」という緊張。

未来思考の根底にあるのは、多くの場合「恐れ」です。
未知のものに対する生存本能的な恐怖が、私たちに最悪のシナリオを想像させます。
もちろん、建設的な計画(プランニング)は必要です。しかし、現代人の未来思考の9割は、解決策のない「取り越し苦労」で占められています。

現代社会の問題点:予測不可能な時代への過剰反応
AIの台頭、経済の不安定さ、気候変動。
現代社会は「VUCA(予測不能)」の時代と呼ばれ、未来への不透明感が増しています。
メディアは常に「将来への備え」を煽り、私たちは「今」を楽しむことよりも、「未来」のために我慢することを美徳とするよう教育されてきました。
しかし、どれだけ心配しても、未来を完全にコントロールすることは不可能です。
コントロールできないものをコントロールしようとする執着が、慢性的な不安障害を生み出しています。

ヨガ的処方箋:結果への執着を手放す
ヨガの聖典『バガヴァッド・ギーター』には、「カルマ・ヨガ(行為のヨガ)」という教えがあります。
それは「結果を期待せず、ただ目の前の行為に没頭せよ」という教えです。
未来の結果(成功や報酬)を気にするあまり、現在のパフォーマンスが落ちてしまっては本末転倒です。
「なるようになる」という、ある種の降伏(サレンダー)。
未来という幻想のお化け屋敷に入るのをやめ、今日できる小さな一歩だけに意識を注ぐのです。

 

「今、ここ」という聖域(サンクチュアリ)

過去思考は「うつ」を生み、未来思考は「不安」を生むと言われます。
では、心の平安はどこにあるのでしょうか?
それこそが、過去と未来の狭間にある、針の先ほどの「今(Now)」という一点です。

ヨガ・スートラの冒頭は、「アタ・ヨーガ・ヌシャーサナム(今、ヨガの教えを始めよう)」という言葉で始まります。
この「アタ(Atha)」は単なる接続詞ではなく、「今、この瞬間に意識を戻せ」という力強い宣言です。

私たちが呼吸をしているのは、今だけです。
心臓が動いているのも、今だけです。
人生という現象が起きているのは、永遠に続くこの「今」だけなのです。
過去や未来について考えているとき、私たちは人生を生きているのではなく、頭の中の妄想を生きています。

 

スピリチュアルなアドバイス:振り子の中心に座る

最後に、少しスピリチュアルな視点からのアドバイスを。
意識を「振り子」だとイメージしてみてください。
左に触れれば過去(後悔)、右に触れれば未来(不安)。
私たちの心は、常に大きく揺れ動いています。
この揺れ幅が大きければ大きいほど、感情の波に飲み込まれ、エネルギーを消耗します。

ヨガの実践とは、この振り子の揺れを小さくし、中心の静止点を見つける作業です。
その中心点こそが「空(くう)」であり、無限の可能性を秘めた場所です。

どうすれば中心に戻れるか?
最も簡単な方法は、「身体感覚」に戻ることです。
今、お尻が椅子に触れている感覚。
服が肌に触れる感触。
鼻先を通る空気の温度。
足の裏が床を押す感覚。

身体は、常に「今、ここ」にしか存在できません。
身体は未来に行くことも過去に行くこともできません。
だから、意識を身体に向ける(アンカーを下ろす)だけで、強制的にタイムトラベルは終了し、現在は戻ってくることができます。

過去思考が出てきたら、「ああ、また古い映画を見ているな」と気づくこと。
未来思考が出てきたら、「ああ、まだ来ないお化けを怖がっているな」と気づくこと。
そして、優しく呼吸に戻る。

過去の自分を許し、未来の自分を信頼し、今の自分を愛する。
それだけで、世界は驚くほどシンプルで、美しい場所に変わります。

過去でも未来でもない、この縁側のような静かな「今」を、共に味わっていきましょう。

ではまた。


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Kiyoshiクレイジーヨギー
*EngawaYoga主宰* 2012年にヨガに出会い、そしてヨガを教え始める。 瞑想は20歳の頃に波動の法則の影響を受け瞑想を継続している。 東洋思想、瞑想、科学などカオスの種を撒きながらEngawaYogaを運営し、BTY、瞑想指導にあたっている。SIQANという日本一簡単な緩める瞑想も考案。2020年に雑誌PENに紹介される。 「集合的無意識の大掃除」を主眼に調和した未来へ活動中。