風の便り、心のささやき – 慌ただしい日々に、ふと立ち止まるということ

自己啓発

皆さま、こんにちは。

窓を開けると、ひんやりとした秋の空気が流れ込んできて、どこか遠くで鳴く鳥の声が耳に届く、そんな季節になりました。

日々の営みの中で、ふとした瞬間に、まるで風が運んでくる便りのように、心の奥底から微かなささやきが聞こえてくることはありませんか。それは、言葉にならないほどの小さな感情の揺らぎであったり、普段は意識の底に沈んでいるような、懐かしい記憶の断片であったりするかもしれません。

私たちは、朝起きてから夜眠りにつくまで、実に多くの情報に触れ、たくさんの「すべきこと」に追われています。

スマートフォンを手にすれば、世界中の出来事が瞬時に流れ込み、仕事や家庭での役割は、私たちに絶え間ない判断と行動を求めます。それはそれで、現代を生きる上でのダイナミズムであり、充実感を与えてくれる側面もあるでしょう。しかし、その喧騒の中で、私たちはいつの間にか、自分自身の内側から聞こえてくる、その繊細な声を聞き逃してしまっているのではないでしょうか。

 

マットの上の静けさ

ヨガのプラクティスは、私たちに、その「聞き逃してしまった声」に再び耳を澄ます時間と空間を与えてくれます。ゆっくりとした呼吸に意識を向け、一つ一つのアーサナ(ポーズ)を通じて身体の感覚を丁寧に観察していく中で、私たちは外側に向いていた意識を、そっと内側へと手繰り寄せていくのです。

最初は、頭の中で様々な思考が駆け巡り、なかなか静けさを見出せないかもしれません。それはそれで、自然なことです。私たちは普段、それだけ多くの刺激の中で生きているのですから。

しかし、焦らず、ただその状態を「そうなんだな」と受け止め、呼吸というアンカー(錨)に戻ってくる練習を繰り返すうちに、少しずつ思考の波が穏やかになり、心の水面が静まっていくのを感じられる瞬間が訪れます。

その静けさの中で、私たちは初めて、普段はかき消されてしまっているような、微細な心の動きや身体のメッセージに気づくことができるのかもしれません。それは、肩に入っていた余計な力であったり、押し込めていた感情の小さな芽であったり、あるいは、ふと湧き上がってきた感謝の気持ちや、誰かを思いやる優しい心であったりするでしょう。

これらの気づきは、決して劇的なものではないかもしれません。しかし、その一つ一つが、私たち自身をより深く理解し、日常をより豊かに、そして「あるがまま」に生きるための、かけがえのない道しるべとなるのです。マットの上で得た静けさと気づきは、プラクティスを終えた後も、まるで優しい余韻のように心に残り、慌ただしい日常の中にあっても、ふと立ち止まり、自分自身に立ち返るための「心の余白」を与えてくれます。

 

「こうあらねば」を手放す勇気

私たちは、知らず知らずのうちに、たくさんの「こうあらねばならない」という思い込みや、社会的な期待、過去の経験からくる固定観念を抱えて生きています。それは、ある意味では、私たちが社会の中で円滑に生きていくための鎧のようなものかもしれません。しかし、その鎧があまりにも重く、硬くなってしまうと、私たちは本来持っているはずのしなやかさや、自由な心の動きを失ってしまうことにも繋がりかねません。

ヨガの教えは、この「こうあらねば」という執着を、少しずつ「ゆるめて」いくことを優しく促します。アーサナの中で、完璧な形を目指すのではなく、今の自分の身体の声に耳を澄まし、心地よい伸びや、時には限界を感じるその感覚を、ただありのままに受け入れる。呼吸が浅くなっていることに気づいたら、無理に深くしようとするのではなく、まずはその浅い呼吸を許容し、そこから自然に深まっていくのを待つ。

このようなプラクティスは、日常生活においても、私たちの心のあり方に大きな影響を与えてくれます。何か失敗をしてしまったとき、自分を責め立てるのではなく、「そういうこともあるよね」と、まずはその事実を受け止める。他人の言動に心が揺れたとき、すぐに反応するのではなく、一呼吸おいて、自分の内側で何が起こっているのかを静かに観察する。

これは、決して諦めや無気力とは異なります。むしろ、現実をありのままに認識し、そこから建設的に次の一歩を踏み出すための、強くてしなやかな心の土台を育むことなのです。「手放す」ということは、何かを失うことではなく、むしろ、より大きな自由と可能性のためのスペースを心の中に作り出す、積極的な行為と言えるでしょう。

 

日常のすべてが、気づきの時間

ヨガのプラクティスは、マットの上だけで完結するものではありません。むしろ、マットの上で培った気づきの感度、物事をあるがままに受け止める心の姿勢を、日々の暮らしの中にどのように活かしていくか、ということが、より本質的なテーマなのかもしれません。

朝、一杯の白湯をゆっくりと味わうこと。通勤の道すがら、季節の移ろいを感じさせる木々の葉の色や、風の匂いに意識を向けること。誰かとの会話の中で、言葉の裏にある相手の感情に思いを馳せること。食事の際には、その食材がどこから来たのか、多くの人の手を経てここに在ることに感謝の念を抱くこと。

これらのささやかな実践は、私たちの日常を、単なるルーティンの繰り返しから、一つ一つが新鮮で、かけがえのない「気づきの宝庫」へと変容させてくれます。それは、特別なことをする必要はなく、ただ、今この瞬間に対する意識の質を変えるだけで、世界の見え方が変わってくるという、驚くべき体験です。

東洋の賢者たちは、しばしば「道は日常にあり」と説きました。悟りや真理といったものは、どこか遠くにある特別なものではなく、私たちの足元、日々の当たり前の営みの中にこそ見出されるのだ、と。ヨガのプラクティスもまた、そのことを私たちに思い出させてくれる、一つの道しるべではないでしょうか。

 

おわりに

慌ただしい日々の中で、私たちは時に、自分自身を見失いそうになることがあります。しかし、そんな時こそ、そっと呼吸に意識を戻し、自分の内なる声に耳を澄ませてみてください。そこには、あなたが本当に大切にしたいこと、あなたを本当に安らがせてくれるものが、静かに息づいているはずです。

EngawaYogaのクラスが、皆さまにとって、そのような内なる静けさと繋がり、日常をより豊かに生きるためのヒントを見つける場となれば、これほど嬉しいことはありません。

風が木の葉を揺らす音、雨が窓を打つ響き、そしてあなた自身の呼吸の音。そのすべてが、宇宙からの優しいメッセージです。どうぞ、その声に気づき、あるがままの自分自身を大切に抱きしめてあげてください。

皆さまの日常が、穏やかで、喜びに満ちたものでありますように。

 


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Kiyoshiクレイジーヨギー
*EngawaYoga主宰* 2012年にヨガに出会い、そしてヨガを教え始める。 瞑想は20歳の頃に波動の法則の影響を受け瞑想を継続している。 東洋思想、瞑想、科学などカオスの種を撒きながらEngawaYogaを運営し、BTY、瞑想指導にあたっている。SIQANという日本一簡単な緩める瞑想も考案。2020年に雑誌PENに紹介される。 「集合的無意識の大掃除」を主眼に調和した未来へ活動中。