【日本でヨガが流行る理由】ブームの裏にある現代人の「渇き」と、ヨガ本来の目的について

日本とヨガ

日本でヨガが流行っております。
駅前には必ずと言っていいほどホットヨガのスタジオがあり、ジムのプログラムにはヨガが組み込まれ、SNSを開けば美しいアーサナ(ポーズ)の写真が流れてきます。
これを単なる一過性の「ブーム」として片付けることは簡単です。
しかし、私はこの現象の奥底に、現代の日本人が抱える切実な「渇き」と、無意識の「祈り」のようなものを感じずにはいられません。

なぜ、私たちはこれほどまでにヨガを求めているのでしょうか。
ファッションだから? 痩せるから? 健康にいいから?
入り口はそうかもしれません。しかし、それだけの理由であれば、これほど長く、深く、私たちの生活に定着することはなかったはずです。

今日は、日本でヨガが流行している本当の理由を、社会的な背景や日本人の精神性、そしてヨガ本来の哲学的な視点から、静かに紐解いてみたいと思います。

 

「足し算」に疲れた現代人の避難所として

現代社会は、私たちに常に「足し算」を強要してきます。
もっと知識を、もっとお金を、もっとスキルを、もっとフォロワーを。
資本主義という巨大なシステムは、「今のままのあなたでは足りない」と囁き続け、私たちを欠乏感で煽り立てます。これをトランスサーフィンなどの現代的な用語で言えば、巨大な「振り子」が私たちのエネルギーを奪おうとしている状態です。

朝起きた瞬間から情報の洪水に溺れ、脳は常にマルチタスクで過熱しています。
私たちは、常に何かに追われています。
そんな中で、ヨガは唯一、「引き算」を許してくれる場所として機能しています。
スタジオのドアを開け、マットの上に立った瞬間、私たちは社会的地位や肩書き、母親や父親といった役割、そしてスマホという情報の窓から切り離されます。

「何もしなくていい」
「ただ、呼吸をするだけでいい」

このメッセージが、現代人にとってどれほどの救いとなっていることでしょうか。
日本でヨガが流行っている最大の理由は、ここが「生産性」という呪縛から逃れられる、数少ない聖域(サンクチュアリ)だからです。
私たちは、何かを得るためではなく、重すぎる荷物を下ろすために、ヨガマットの上へと向かうのです。

 

デジタル社会による「身体の喪失」への回帰

私たちは今、歴史上かつてないほど「身体」を忘れて生きています。
仕事はデスクワーク、コミュニケーションは画面越し、移動は電車や車。
意識のほとんどが「脳」と「指先」に集中し、首から下が単なる「脳を運ぶための乗り物」に成り下がっていると言っても過言ではありません。

身体性の欠如は、深刻な「生の希薄さ」を招きます。
生きている実感がない、ふわふわして不安だ、という感覚です。
現代思想的に言えば、これは身体という「野生」を飼いならしすぎた結果の弊害です。

ヨガは、この忘れられた身体に、もう一度意識を還す作業です。
足の裏で大地を踏みしめる感覚。
肺いっぱいに空気が入ってくる感覚。
背骨が一本一本伸びていく感覚。

これらの微細な感覚(内受容感覚)を取り戻すことで、私たちは「ああ、私はここに生きているんだ」という原初的な安心感を得ることができます。
日本人が無意識に求めているのは、デジタルの海で溺れかけた自分を、身体という大地にアンカー(錨)することなのです。

 

日本人のDNAに刻まれた「禅」との親和性

なぜ「日本で」流行っているのか。そこには文化的な土壌も関係しています。
ヨガのゴールである「サマディ(三昧)」は、仏教における「悟り」や「禅」の境地と非常に近しいものです。
日本にはもともと、茶道、華道、武道といった「道(Do)」の文化があります。
これらは単なる技術の習得ではなく、型を通して精神を統一し、無我の境地に至ることを目的としています。

ヨガの「アーサナ(ポーズ)」から入り、「プラーナヤーマ(呼吸法)」を経て、「ディヤーナ(瞑想)」へと至るプロセスは、日本人が古来より大切にしてきた「型から入って心に至る」という稽古の文化と深く共鳴します。
つまり、日本人にとってヨガは、新しい海外のフィットネスであると同時に、どこか懐かしい「行(ぎょう)」の記憶を呼び覚ますものなのです。

現代のお寺離れが進む中で、ヨガスタジオが、かつてのお寺や神社の役割——つまり、静寂に触れ、自分自身と対話する場——を担っているという側面もあるでしょう。

 

スピリチュアリティの誤解と、ヨガ本来の目的

しかし、ここで一つ注意しなければならないことがあります。
現在のヨガブームの中には、「ヨガ的なライフスタイル」という名の新たな「振り子(ペンドュラム)」が生まれていることです。

「キラキラしたウェアを着なければならない」
「オーガニックな食事をしなければならない」
「体が柔らかくなければならない」
「ポジティブでなければならない」

これらは、形を変えた「足し算」の強要です。
もし、あなたがヨガをすることで「私はあの人よりポーズが下手だ」と劣等感を持ったり、「もっと美しくならなきゃ」と焦りを感じているなら、それはヨガ本来の目的から離れてしまっています。
それはエゴの強化であり、過剰ポテンシャルを生み出す原因となります。

ヨガの教典『ヨガ・スートラ』の冒頭にはこうあります。
「ヨガとは、心の作用を止滅させることである」

ヨガの本来の目的は、痩せることでも、美しくなることでも、超能力を得ることでもありません。
暴走する思考(マインド)を静め、波立たない湖面のような静寂な心を取り戻すことです。
その静けさの中で初めて、私たちは「本当の自分(真我)」に出会うことができます。

 

現代を生きるためのスピリチュアル・アドバイス

最後に、このブームの中で、私たちがどのようにヨガと向き合えばよいのか、ささやかな提案をさせていただきます。

① 「比較」という戦場から降りる
スタジオの鏡に映る自分を、他人と比べるのをやめましょう。
隣の人のポーズの美しさは、あなたの人生には何の関係もありません。
ただ、自分の内側の感覚だけに集中してください。
「私は私のままで完全である」という感覚こそが、最強の免疫力となります。

② 「変化」を急がない
すぐに結果を求めないことです。
「3ヶ月で人生が変わる」といったキャッチコピーに踊らされてはいけません。
ヨガは一生続く旅です。
今日、マットの上で深呼吸が一つできた。それだけで十分です。
その小さな「心地よさ」の積み重ねが、いつの間にかあなたを本来の人生のライン(ライフトラック)へと導いてくれます。

③ 日常に「隙間(Ma)」を作る
ヨガマットの上だけでなく、日常にヨガを持ち運んでください。
信号待ちの間に深呼吸をする。
コーヒーを飲む時に、香りを完全に味わう。
情報の入らない時間を10分だけ作る。
この「隙間」こそが、過剰なエネルギーを逃し、新しい運気や縁が入ってくるスペースとなります。

 

終わりに

日本でヨガが流行っているのは、私たちが「本来の自分」に還りたがっているからです。
便利になりすぎた社会、情報過多な世界、繋がりすぎて孤独な時代。
そんな中で、ヨガは「ただ、ここに在る」ことの尊さを思い出させてくれる羅針盤です。

流行り廃りは関係ありません。
あなたがもし、生きづらさや息苦しさを感じているなら、ぜひ一度、静かに座ってみてください。
ポーズができなくても構いません。
ただ、自分の呼吸の音に耳を澄ませる。
その静かな営みの中に、あなたが探し求めていた答えのすべてが含まれています。

ではまた。


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Kiyoshiクレイジーヨギー
*EngawaYoga主宰* 2012年にヨガに出会い、そしてヨガを教え始める。 瞑想は20歳の頃に波動の法則の影響を受け瞑想を継続している。 東洋思想、瞑想、科学などカオスの種を撒きながらEngawaYogaを運営し、BTY、瞑想指導にあたっている。SIQANという日本一簡単な緩める瞑想も考案。2020年に雑誌PENに紹介される。 「集合的無意識の大掃除」を主眼に調和した未来へ活動中。